ぬるぬる


 粗末な内装のラブホテルで窓から除くネオンサインに乾杯した。
 何かめでたいことがあったわけじゃなくて、ただ単に酒を持ったら乾杯というのは基本だと思う。
 ベッドの上には起伏の少ないフラットボディな女の子が横になっている。
 股間から破瓜の血。
 出会い系サイトで知り合ったこの子は、同級生の女の子がどんどん処女を捨ててるのを知って焦ったんだって教えてくれた。
 中学生だってよ。
 でもまぁいいや、初潮を終えてるってならそれは子供が産める年齢に達したってわけで、生物学的には俺とこの子のセックスには何の問題もないわけです。

「おい、ビール飲む?」
「……いらないです」
「あっそう」

 少女はつれない。
 ホテルに入る直前まではキャーキャーはしゃいで俺の腕にまとわりついて来てたくせに、何だこの態度。
 ひょっとしてあれか、やったときに思っきし動きまくったのが機嫌を損ねたのか。
 そういえば痛い痛いって言ってたもんな。
 こんなところにホイホイついてきといて何を今更って思ったからぜんぜんフルパワーで動きまくったけど。
 俺の腕の下でこの子はメチャメチャ泣いてた。
 痛い痛い、抜いて抜いてってさ。
 やべぇ思い出してきたらちんこ勃った。
 とりあえずこのビールは一気だ。
 ぐいぐい煽ると炭酸が喉で弾ける。
 つれぇ。
 ビールって初めの一口二口までは美味しいけど、それ以降は普通にまずいと思う。
 ウーロンハイが好きなので飲みたいと思いました。
 でもホテルの冷蔵庫にそんな気の利いたものは入ってないので諦めましょう。

「っぷはぁ!」

 飲みきった。
 腹がちゃぽんちゃぽんしてる気がする。
 こんなでセックスしたらわき腹が痛くなるかもしれん。
 それはそれでまた友達に馬鹿話ということで話してやろう。
 俺は窓から見えるネオンサインから視線をはずした。
 振り返るとベッドには相変わらず脱力したように仰向けになってる女の子がいる。
 俺は彼女の横になってるベッドの脇をすり抜けて壁に張り付いてる電話機を取った。
 短縮番号を押してフロントに繋ぐ。

「あ、もしもし402号室です。―――はい、はい、ええそんな感じで。幾ら? あ、そう。それじゃそれでよろしく」

 がちゃ。
 受話器を置くと視線を感じた。
 少女がベッドの上で身を起こしてこっちを見ている。

「どうしたの?」
「別になんでもないよ。ちょっとフロントに電話してただけ」
「なんで?」
「延長をね」

 言うと少女はびくっと震えた。
 彼女に歩み寄る。
 震える肩を見ていると、電話してる間に萎えかかったちんこに活力が舞い戻ってきた。
 いける、まだまだぜんぜんいける。
 彼女の隣に腰を下ろした。

「なぁ」
「な、なんですか?」
「えっちしようぜ」

 おっぱいに触れた。
 膨らみかけの硬いような柔らかいような微妙な感触。
 手のひらに当たる乳首は硬さを取り戻したのか、それとも硬いまんまだったのか。
 どっちでもいいや、つまみあげる。
 きゃんっと鳴いた。
 素敵だ。

「や、ちょっと!」
「なに?」
「ぃやっだ―――ってば!」
「いいじゃんいいじゃん」
「よくないよっ」

 俺の胸を押して抵抗する少女。
 萌える、違う、燃える。
 胸から手を離して肩と手首を押さえた。
 そのまま後ろへ押し倒す。
 片手で彼女の両手首を頭上に押さえつけると、空いた手で顎を上げさせた。
 唇にすいつく。
 べろんべろんと唇を舐めまわしてやった。
 それでもかたくなに唇を閉ざして舌を受け入れようとしないこの中坊にはマジでお仕置きしないといけないと思います。
 ターゲットを唇から切り替え鼻にチェンジ。
 鼻の穴をほじくる様に舌を挿入してやった。
 羞恥に少女の顔が赤く染まる。
 鼻の穴はちょっとしょっぱくて苦かった。
 そういやさっき顔射したけど、ひょっとしてこの苦味はザーメンの苦味なんでしょうか、とか思うと鬱になる。

「咲ちゃん」
「〜〜〜っ!」
「鼻の穴、しょっぱいよ咲ちゃん」

 とまぁこんなことを口に出してしまう俺は相当な変態だなぁと思うわけで。
 小ぶりな胸の頂点にあるトップオブ乳首をこね回しながら、俺は彼女の脚の間に割り込ませた膝頭でべしょべしょのまんこを擦りあげてやった。
 びくんびくんと反応する少女。
 俺のちんこもびくんびくんと踊ります。

「あー、駄目だ。もう我慢できんわ。入れる、超入れる」

 彼女の手首を解放した。
 離して欲しいのか、ようやく自由になった腕で俺の胸をばしばし叩いたり、腰を押さえつける腕をつねりあげたりしてくる。
 ちょっと痛いし、しかもうざい。
 右手の中指と人差し指を前振りなしでまんこに突っ込んでやった。

「ひんっ」

 小さく悲鳴をあげる彼女。
 ぶち込んだ中指と人差し指をにゅるにゅるしか感じの膣壁が熱く締め付けてくる。
 あああ、ちんこ入れたい。
 膣をぐちゃぐちゃかき回してやると汁がびゅんびゅん飛んで、咲ちゃんは痛い痛いって泣きながら一層叩いてくる。
 っかしいな、こんな濡れてるくせになんで痛いんだ。
 女ってのはそんなもんなのか。
 初めての女はめんどくさい、って中学んときに読んだ相当胡散臭いハウトゥー本に書いてあったけど、それも案外間違いじゃないかもしれん。
 そんなことを考えながらまんこを弄り回してると、少女の抵抗が弱まってきた。
 よし、ちんこ入れよう。


 /


 なんかよく分からんうちに大ハッスルして、気がつけばあの後3回も少女を犯してしまった。
 最後の方になるともう咲ちゃんも何かが吹っ切れたのか、抵抗は全くしなくなっていた。
 がっくんがっくん腰振ってきて、開始当初の初々しさは一体どこへって感じ。
 とはいえ3回全部中出し決めた俺も相当アレもんだと思う。

 ホテルから出て、すっかり足腰立たない少女を俺は車に乗せた。
 その頃には彼女はすっかり眠りに落ちている。
 荷物を漁って住所を確かめた。

 神奈川県川崎市麻生区菅生○○○−○○○○。

 やべぇ、家めちゃくちゃ近所だ。
 なんというか罠にはめられた感じ。
 適当に家の近くまで行って咲ちゃんを起こしてあげた。
 それからさよならって別れる。
 若干がにまた気味に歩いていく彼女は案の定、俺の賃貸マンションから歩いて2分ほどの一戸建てに帰っていった。
 微妙に鬱な気分です。
 帰りしな、コンビニに寄ってスタミナドリンクを買った。
 セックスの後はこれが効くんだ。


 /


 それから一ヶ月ほどは平凡な日常が続いた。
 俺は普通に大学に行って普通に講義を受ける。
 夜になったら友達の家に行って酒飲んだりマージャンやったり。
 友達に女を紹介してもらったりしたけど、変に頭のいい女はすぐにはHをさせてくれないのでちょっと寂しい。
 別にHしたいだけなら風俗でもなんでも行けってその子に言われたので、そんな金はねぇって言ったら引っぱたかれました。
 女の子に殴られるなんて随分久しぶりだったんで驚きましたよ?

 で、その平凡な日常はある日唐突に終わる。
 家に帰って久しぶりにパソコンを立ち上げたら、以前出会い系サイトに登録したフリーメールのボックスにあの咲ちゃんからのメールが入っていた。
 クリックして内容確認。

「会えませんか?」

 そんな短いメッセージと共に記されていたのは待ち合わせ場所と日付、時間。
 待ち合わせ場所は狙い澄ましたように近所のコンビニだった。
 畜生、どっかで見られたか。
 まぁあれだけ近所なら仕方ないと言えば仕方ないのかもしれん。

 正直言ってのこのこ待ち合わせ場所に馳せ参じるつもりなかった。
 だってさ、こないだ大学の友達に言ったら「お前、それ普通に犯罪だからな」って言われたし。
 相手中学生、俺大学生。
 しかも俺一浪してるから22歳。
 捕まります、逮捕されます、駄目でしょう。

 というわけで軽やかにスルーするつもりだったので俺はそのままメールボックスを閉じた。
 どのみち待ち合わせの日付が一昨日だったので関係ないんだけどね。
 最近はバイトが忙しくてパソコンしてる暇がなかったんだ。
 よかったね、俺!


 /


 さっきも言ったけど、俺の平凡な日常はとっくに終わっていたのです。
 メールボックスを久々に開いた翌日のこと。
 友人に紹介してもらった、今度はかなり頭の悪いやりまんな女とのしっぽりワンダータイムを過ごして帰宅途中。
 俺はセックス後の華麗なる嗜みとばかりに近所のコンビニでスタミナドリンクを買っていた。
 レジで支払いをしようとしている俺のシャツに、くいくいと引っ張られる感触。
 なんだこらぁと特攻の拓ばりのガンつけで振り返れば、そこに中学生がいらっしゃいました。
 咲ちゃんです。

「こんにちは」

 こんにちはじゃねぇよ!
 そう思いつつも俺は店員からスタミナドリンクを受け取り、引きつった笑顔で彼女に向き直った。

「や、やぁ、久しぶり」
「はい」
「えと、ちょっと待ってくれる? 今買い物中だから」
「外で待ってます」
「お、おう」

 にこりと笑って身を翻す咲ちゃん。
 勘弁してけろ。
 目の前のコンビニの女性店員、アルバイトの品川さんが胡散臭げな眼差しをこちらに向けてくる。
 いやっ、そんな目で見ないでっ。

「なにあれ、麻生君、あれ彼女?」
「ははは、何を仰いますやら。あれ中坊ですよ? 手出したら犯罪ですがな」
「でも麻生君ロリコンじゃん」
「そういう人に誤解を与える物言いはしないでもらいたいね」
「その似非紳士風の言葉遣いが胡散臭さを助長してるよね」

 品川さんは大卒3年目の素敵なフリーターだ。
 その素敵さは鋭すぎる洞察力にも現れてる。
 このコンビニの常連さんである俺はこの品川さんとも変な縁で何回か飲みにいったことがあるのだが、どうせなら咲ちゃんみたいなフラットロリータよりも、品川さんのようなワンダフルな女性とえろいことをしたいと常々思っている。
 その乳を揉ませろ。

「品川さん、それじゃ」
「うん、また来てね」

 暗澹たる気持ちでコンビニを出る。
 咲ちゃんはコンビニ前の駐車スペース、縁石に腰を下ろして俺を待っていた。
 正面にまわってしゃがみこむ。

「お待たせ」
「あ、はい」

 声をかけるとうつむいていた顔をはっと上げた。
 ちなみにお前パンツ丸見えな。
 その姿勢だときっと前からは丸見えなんだろうなぁ、という予感に従って行動してみたら案の定パンツ丸見えだったわけよ。
 嬉しいか嬉しくないかで問われたら、そのアンサーは半勃ちになっているちんこに注目ということでよろしく。
 俺飢え過ぎですか?

「とりあえず、久しぶり」
「お久しぶりです」

 なんて声を掛けたらいいか分からんもんだから、適当に声を掛けてみる。
 彼女のリアクションも鸚鵡返しっぽい感じ。
 どうしたもんかなぁ。
 俺は立ち上がった。
 咲ちゃんはそんあ俺を目で追ってくる。
 てくてく歩いて駐車してあるマイカーの鍵を開けた。

「えっと……乗る?」
「……はい」

 咲ちゃんは頷いて俺についてきた。
 コンビニの中から品川さんがにやにや笑いでこっちを見ていた。
 ああ、このコンビニ来づらくなりそうとか思った。
 くそう、その乳を揉ませろ。


 /


 品川さんの働くローソンを出た俺の車(キューブ)は国道を走る。
 じゃがじゃがとやっかましい音楽はメロコアの王様、ハイスタのメイキングザロード。
 伸びのあるメロディアスなサウンドに乗せて、切れのある牧歌的なヴォーカルがとんがった優しい歌詞を歌っている。
 俺も歌った。
 ハイスタの曲は10曲くらい暗記している、中途半端とか言うな。
 しかも咲ちゃんはそんな俺に「音痴ですね」とか言って笑った。
 大きなお世話である。

 そのまま何となく会話も交わさずに車を運転していると、不意に咲ちゃんが言った。
 川崎を抜けて横浜に入ろうとしている頃だった。

「どうして来てくれなかったんですか?」

 来てくれなかった、とはこないだのメールのことだろう。
 最近忙しくてさ、と俺は切り出し、

「でさ、メール開いたのが昨日だったんだ」
「……そうですか」

 信じてねぇーって面だ。
 嘘は言ってないんだけどね。

「まぁ、どっちみち会うつもりなんて無かっただろうけど」
「なんでですか?」
「いやぁ、メンドクサイしね」
「でも、今はこうして車に乗せてくれてるじゃないですか」
「なりゆきってやつでしょ。俺さ、あのコンビニの店員さんと知り合いなんだよ。知り合いの目がないところだったら逃げてたよ」
「酷いですね、麻生さんて」
「酷くなかったら普通中学生の処女をべろりんちょなんてしないでしょ」
「そうかも……」

 咲ちゃんが俯く気配がした。
 ちらりと横顔を覗けば頬が赤い。

「思い出しちゃった?」
「えっ?」
「こないだのさ、のーこーな初体験」
「う……」
「俺さ、処女の子とえっちしたの初めてだったんだけど、みんな初めてでもあんなぐっちゃぐっちゃに濡れるもんなわけ?」
「し、知らないですよっ」
「さっきさ、コンビニの前で座ってたじゃん?」
「は? あ、はい」
「咲ちゃん、パンツ丸見えだった」
「!」
「うははははは」

 笑うと咲ちゃんが腕を叩いてきた。
 運転中は危ないんで勘弁してくれ。

 それからまた暫く無言の時が続く。
 なんか喋ってくんないかなぁ。
 ぶっちゃけこないだ会ったときも俺は自分から彼女に話題を振ることは殆どしなかった。
 最近の子供がなに考えてるのかなんて想像もつかない。
 だから咲ちゃんが話すなんてことない話に相槌をうって、時々話題を合わせて自分のガキの頃の話をしたりとか。
 あんなデートでも咲ちゃんは楽しそうだったなあ、と今更ながらに思う。

 車を埠頭の方に走らせていた。
 理由はなんとなく。
 今日の咲ちゃんを見ていたらそんな気分だった。
 日は当に落ち、街は夜の顔を現し始めている。
 遠くから波の音が聞こえ始め、全開にした窓から吹き込む風に潮の匂いが混じってきた。

「実は」
「え?」

 咲ちゃんが口を開いた。

「聞きたいことがあったんです」
「……」

 車を埠頭付近の駐車場に向けた。
 鼻先を海に向けるように駐車してエンジンを止める。
 サイドレストからタバコを取り出した。

「吸うけど?」
「あ、どうぞ」
「ん」

 口にくわえたのはタール8mgマルボロメンソールライト。
 ライターで火をつけながら話の続きを促した。

「わたし、麻生さんと、そのぇっち、したじゃないですか」

 うわ、赤くなっとる。

「したね」
「それで、その」
「うんうん」
「あの……」
「うんうん」

 言いよどむ咲ちゃん。
 どうでもいいからさっさと話してくんないかな。
 ひょっとしてアレか。
 またしたくなったとか?
 それで言い出すに言い出せない的な感じ?
 初々しくていい感じじゃないですか。
 むくむくしてきましたよ?

「あれから、だいたい2週間ぐらい経ちましたよね」
「ああ」

 ちんこも勃ってるけどね。

「それで、わたし」
「うんうん」
「えっちして、処女じゃなくなって」
「うん」
「処女のときと何か変わったかなぁって、思います?」
「……はぁ?」
「だ、だから、エッチする前のわたしと、エッチしたあとの今日のわたしで、麻生さんはわたしに何か、違う印象とか持ったかなぁって、そういうこと」

 えっと、なんだ、ごめん意味が分からない。
 意味が分からないけど、どうも「またえっちしたくなってきちゃったのっ、麻生さん、わたしをメチャメチャにしてっ」っていうわけではなさそうだ。
 つまんね。
 つまんねーし、しかも質問の内容もよく分からんけどこれはあれなんだろうか、思春期の幻想的なやつ。

 小学校から中学校にあがると子供たちはそこで初めて明確な男女の違いってのを学ばされる。
 今の中学校がどうなってんだかは知らないけど、俺が中学に上がったときは、そこで初めて、そうだな、例えば体育の着替えの時なんかに男女別の更衣室で着替えをさせられた。
 ついでに体育の授業でも別の種目をやらされたりなんかして。
 男女の性差っていうの?
 男と女は結局のところで別のいきもんなんだって俺は知った。

 生物学的にも男女では全然別の役割があるってこと、それは小学校の保健の授業でもやったことだった。
 けれどそれを生の感覚で理解したのは、年上の兄弟がいる友達に見せられたアダルトビデオが最初だったと思う。
 男のちんこを女のまんこに挿れる。
 ぐちゃぐちゃ腰を動かす男に、あんあんよがる女。
 初めて見たときは画面の中の男女が何をやってるのかさっぱり分からなかった。
 それがセックスだって友達に教えられて、恋人同士になった男女がやるものだって知って、それは漠然と憧れのようなものとして俺の脳裏に刻まれたのを覚えている。

 今俺の横、助手席に座って俺を見上げる咲ちゃんは、俺がそんな憧れを持ったのと同じくらいの年齢だ。
 セックスを経験した後で、自分は何か変わったのだろうか。
 そう疑問をぶつけてくるのは割りと無垢な瞳。
 馬鹿じゃねぇかと思う。
 出会い系サイトの掲示板に処女もらってくれる人募集なんてらりぱっぱなカキコするような少女が無垢な筈なんてない。
 けれど、そんな阿呆丸出しな質問をする咲ちゃんの眼差しは真剣で。
 やっぱり俺はガキってのは頭悪いんだよなぁと思うわけだ。

 セックスに意味なんてない。
 少なくとも今の俺にはそうだ。
 それは咲ちゃんと比べりゃ年くってるってのもあるだろうし、例えば咲ちゃんに限らず、行きずり一夜限りを想定した性欲処理のようなセックスにはホントの意味で意味なんてありゃしないのだ。
 セックスが特別な意味を持つのは、若い日の幻想の中でと、それと映画や小説、ドラマの中でだけ。
 あとは強いて言えば本当に愛し合っている人間同士の触れ合いでだけだろう。

 本当に愛し合っているってなんだろう。
 俺が童貞を捨てたのは高校の時の話で、それは当時付き合っていた彼女が相手だった。
 アダルトビデオやエロ本で読んだ知識を総動員して彼女を抱いた。
 いやいや、あれは抱いたなんて上品なもんじゃなくて、わけも分からず貪ったって感じだったと思う。
 ぶっちゃけ焦りすぎてゴムも巧くつけられなかった。
 そんでもって中出しですよ、ワンダフォー。

 ぱにくってた俺は中出ししちまったことに焦ったし、そんな彼女のまんこをティッシュで拭いながら、彼女のまんこから血が出てなかったことに泣きそうになった。
 彼女は初めてじゃなかったんだ。
 俺だけが焦って、みっともなく中出しなんかしちゃって、そんで彼女は処女じゃなかったとは、つまり当時の若すぎる俺はそれを彼女の裏切りのようにさえ思ってしまった。

 セックスが終わって、俺は呆然と天井を見上げる。
 後戯なんて、そんなもん考えてる余裕はなかった。
 初めてのセックスの前と後で何が変わったって?
 何も変わりゃしなかったさ。
 馬鹿みたいに幻想もって、俺はこいつのことが好きで多分一生愛してくなんてお前、まじ今なら笑い話だよな。

 今でも思い出すと恥ずかしさで頭をがんがん壁にぶつけたくなってくる。
 顔を手で覆って笑いをかみ殺した。
 助手席に座る咲ちゃんはそんな俺を不思議顔で見つめる。
 タバコの火をもみ消した。

「セックスして、それで何が変わったかって?」
「はい」
「何か変わったって思うわけ、咲ちゃんはさ」
「……ううん、分かんないです。分かんないから聞いてみたくて」
「友達がどんどん処女捨ててるから、自分も焦ったって言ってたよな」
「……はい」
「その友達とかは何か言ってた? セックスして価値観変わった、とか、世界が広がった、とか」
「いえ、言ってないです」
「だったらさ、なんで咲ちゃんはセックスで何か変わるなんて、そんな今時Hのハウトゥー本にも載ってないような幻想を抱いちゃったわけよ?」
「えっと……少女漫画、とかで」
「うあはははははははははははっ」
「わ、笑わないで下さいよっ」

 爆笑する俺に咲ちゃんは不満そうに唇を尖らせた。
 俺はひーひー笑いながら咲ちゃんの顔を見る。
 あーそっか、なるほど、少女漫画ね。
 純心純心、素晴らしいじゃないですか。
 今時いないんじゃないかな、こんな子。
 マジレア、天然記念。

「あははは、ははっ」
「麻生さんっ」
「あはははははは、悪い、ごめん。面白いわ咲ちゃん、どストライク。俺の笑いのつぼ直撃」
「ひ、酷いです、こっちは真剣なのに」
「いやはははは、ごめんごめん。でもさ、ほんと、でも不思議だよな?」
「……なにがですか」
「んー? 咲ちゃんみたいな子がさ、なんか少女漫画に憧れ持ってるってか、なんつーかそんな純心丸出しな子が、出会い系で知り合ったよく知りもしない男に処女あげちゃうとか、不思議だと思うよ?」
「だって……」

 みんな、どんどん処女捨てたって言うんだもん。
 そう言った咲ちゃんは微妙に泣きそうだった。
 泣くな、うざいから。

「まぁ、さ? 俺の年上としての意見を言わせてもらえば、セックスの後で何が変わるかって話だけど、ぶっちゃけ何も変わんないと思うんだよな?」
「そんなもんですか?」
「そんなもんだよー。それがまぁ、咲ちゃんが好きな人に処女あげたってならまた話は別だったかもしんないけどさぁ。そこで焦ったからって出会い系でいきなり処女捨ててもそりゃ、セックスがどんなもんか知ったってだけで終わって当然じゃないの?」
「そう思ったんなら、あのとき止めてくれたらよかったのに」
「自分に都合のいいことばっか言ってんじゃないよ、お子さま」

 むぅっと不貞腐れた咲ちゃんに俺は手を伸ばした。
 ちょっとごめん、とか何とか言いつつ、いきなり助手席のシートを倒す。

「きゃっ」
「話はお終い?」
「え」
「だったらほら、えろいことしようぜ」

 制服越しに薄い胸を揉んだ。
 ぐにぐにとしてブラの感覚が目障り。

「やっ、ちょっと、やめ」
「馬鹿言ってんじゃないよ。もしかしたらやられるかも、ぐらい思ってたんだろ? 車乗った時点でさ」
「思ってなかったですっ」
「知るか、だったら次から気をつけろ」
「やぁ―――むぐっ」

 咲ちゃんの口を手で塞ぐ。
 空いた手でズボンのチャックを下ろした。
 むき出しになったちんこはもうとっくに勃起している。
 それを咲ちゃんの太ももに押し付けながら、片方の手は咲ちゃんのスカートの中に潜り込ませた。
 多分汗なんだろう、スカートの中は少しむわっとしていて、パンツは少し湿っているように感じられた。
 多分愛液じゃないと思う。
 でもまぁ別にいいや、いじくってりゃ濡れてくるんだろ。
 それを口にしてやると咲ちゃんは真っ赤になって真っ青になった。
 可愛すぎる。
 パンツ越しにまんこを弄くりまわして咲ちゃんの反応をうかがった。
 なんだかんだでしっかり感じているようで、ぴくぴくと震えてくれている。

「咲ちゃん」
「んーっ、んーっ」
「そりゃセックスにも何かしら意味はあるんだって、俺もそう思うよ」

 擦りあげているうちに咲ちゃんのパンツが汗とは違う湿りを帯びてきた。
 擦る指を人差し指から親指に代える。
 割れ目を押しつぶすように弄くって、自由になった人差し指を後ろの穴に向けた。

「でもさ、意味あるセックスってきっと、必ずどっかに愛が関わってくるんだと思うわけよ」

 人差し指が後ろの穴に触れると、咲ちゃんの抵抗は増した。
 ばしばしと叩く手にも力がこもる。
 親指をパンツの隙間から潜り込ませて直にまんこに触れた。
 熱く濡れている。
 こいつ絶対淫乱の素質あるわ。
 人差し指はアナルをぐにぐにと撫で回す。

「例えば、オーソドックスに好きな人同士が互いの気持ちに触れ合うためのセックス。例えば、好きな人を痛めつけるためだけのセックス、愛が裏切られるんだって、そういうの。愛がらみで他にどんなバリエーションがあるのか、今の即興じゃあ他に思い浮かばないんだけどね」
「あぐ、んむっ、うぅぅぅぅっ」
「今俺は咲ちゃんを犯そうとしてる。ほら、咲ちゃんえろいよな、無理やりでもこんな濡れんだからさ」

 咲ちゃんのまんこから出た液でべとべとになった手のひらを見せ付けてやった。
 真っ赤になって顔を逸らす。
 が、そんな咲ちゃんに見せ付けるようにして、俺は手のひらにまとわりついた咲ちゃんの愛液を舐めた。

「まんこ、臭いよ、咲ちゃんのまんこ」
「んーーーーっ!」

 我ながらすごい台詞だと思います。

「こういうのも個人差らしいんだけど、とりあえず咲ちゃんのまんこは臭いわ。もっとあっさり系の食事に変えろよ」

 手についた咲ちゃん汁をひとしきり堪能してから、またまんこに帰っていくマイフィンガー。
 例によってパンツの隙間から潜り込ませて、いい感じに濡れ濡れのまんこを弄る。
 肉襞をひっぱたり、指を中で曲げてみたり、親指の腹でクリトリスをノックしたり。
 繰り返していると咲ちゃんの抵抗も弱まってきたので口を開放してやった。
 首筋を撫でながら聞く。

「気持ちいい?」
「そ、んな……」
「気持ちいいだろ? セックスってさ、結局そんなもんだと思う」
「やぁっ」

 中で円を描くようにくるくる指をかき回した。
 膣壁を指がなぞって、下から上に撫で上げるときが一番反応が大きいとかそんなことを発見。

「夫婦が子供を作るためにセックスするじゃん? あれがセックスの正しい目的だよな。でも俺とかお前の友達とかもセックスはするけど子供はいらないわけで、それって生物学的には不自然な行為だって分かってる?」
「あ、や、いやっ」
「聞いてるかな、聞こえてないかなー。まぁ別にどっちだっていいけど、とりあえず続き言うとさ、こないだの俺らのセックスだよ。子供なんていらないから、あれには本来上の意味はなかったわけで、しかも俺たちがお互いに愛し合ってたわけじゃなくて、好き合ってもいなかったんだから、精神的な側面からも意味はなかったわけだ」
「きゃんっ」

 ちゅぽんっと指を抜いた。
 びくっと震える咲ちゃん。
 手をひらひらやると、指先が咲ちゃんのまんこ汁がぽたぽた落ちた。
 あー、今度の週末車掃除しないとなぁ、めんどくせ。
 咲ちゃんのまんこ、臭いから匂いとかつきそうで嫌だ。
 そんなことを考えながら彼女のパンツに手を掛ける。

「そんなセックスでさ、何かが変わるわけなんてないんだよ。分かるよな、分かっとけよ。変わったこと? そりゃ咲ちゃんのまんこん中に処女膜がなくなっただけさ。なにも変わりゃしない、変わるもんか、馬鹿かお前」
「やぁだっ、やめてよぉっ」
「ああ、無理やりってなんかいいな。俺、レイプするやつの心境なんて考えられないってずっと思ってたけど、今少し分かる気がする。おい馬鹿、ケツ上げろよ、パンツ邪魔だよ」

 ぱんっと太ももを叩くと「ひっ」て泣いて咲ちゃんはケツを上げた。
 引っかかっていたパンツをずり下ろす。
 まんこが露になった。
 女の匂いがする。
 くちゅくちゅ、むんむん、とろとろ。
 ああ、俺のちんこってこんなにでかかったか?
 竿を握って咲ちゃんの顔の前に持ってく。

「どう? これ俺のちんこな。これが前に咲ちゃんのまんこに入ってたやつで、そんでもってこれからまた咲ちゃんの中に入んの」
「やっ」
「やっ、じゃねぇよ。入れるし、咲ちゃんが嫌がっても」
「やめてよ……どうして、さっきまで麻生さん優しかったのに」
「そんなこと言われてもなぁ。昔からよく言うじゃん、上半身と下半身は別の生き物ってさぁ」

 まぁいいわな、そんなこと。
 って言って、俺はまんこの割れ目にちんこを押し付けた。
 ぶるぶるって震える彼女。
 割れ目をなぞるようにちんこを擦り付けて、愛液をまぶしていく。
 そんなことしなくても咲ちゃんのまんこは濡れに濡れきってるわけで、そのまま入れちゃっても問題なしって気もする。
 でもこうすると咲ちゃんがびびるっぽいんだよな、それがいい。
 輪姦もののAVなんかでもこうやって勿体つけてるし、うん。
 それに入れないまでもこうやって擦り付けてるだけで、咲ちゃんのぬるぬる感が気持ちいいんだよねぇ。

「例えばだよ、セックスをして、新しい世界が広がるとか、多分そんなことが少女漫画には描いてあったか、或いはそれに近いような描写がしてあった。違う?」
「そ……そうです……ぁんっ」
「だよねだよねー。でもさ、それって間違い。新しい世界が広がるなんて無い無い。だってさ、そいつがそれを新しい世界って思ったって、その新しい世界ってのはもとからちゃんとあったわけで、それを新しい世界って感じたのはそいつ、その漫画のキャラがその世界を知らなかったからに過ぎないわけよ。ごく一部にはまぁ、死ぬまで童貞、或いは処女ってやつもいないわけじゃないかもしんないけど? でもさ、それ、その“そいつ”曰くの新しい世界ってのは、結局のところ誰しもがいつしか通るミチなわけでして。その新しい世界に触れるってことは要するに、なんにも特別なことじゃないわけだ―――よっと」
「っ!?」

 つぷ、と先っぽだけ入った。
 うはー、きっつー。
 でもかなり気持ちいい。

「こないだ、大学の講義で言ってたんだけど、さっ」

 ぐにぐにとちんこを押し込みながら。
 絡み付いてくるような肉の襞、まんこの中あったかい。
 むにゅむにゅと柔らかく締め付けてくる感じ。
 あ、あ、あ、って咲ちゃん声にならない声を出して仰け反ってる。
 俺の言ってることキイテンノカナ。
 聞いてなくてもいいけどさ。
 あー、まんこやべー。

「教授曰く、『世界は主観的観測と客観的観測の二つから成り立っている』だとさ。主観ってのは自分で見た、ってことで、客観ってのは第三者的な立場から見た、ってこと。……だと思ったけど、間違ってたらごめんな、あ、それと、もう動いていい?」

 返事はなかった。
 なのでとりあえず動いてみる。
 車のシートがぎしぎし言ってる。

「まぁでもそれって当たり前のことだよな。あ、この場合の世界って、地球とか宇宙とかそういうんじゃなくて、俺らに見えてる世界観、みたいなやつのことね。主観世界と客観世界の間で折り合いをつけて自ら設定するのを主観的相対世界観って言うらしいんだけどさ、あー、俺なに言いたいんだっけ? 咲ちゃんのまんこがいい感じなので忘れてしまいそうになるんですが責任とって下さい」
「む、無茶言わないっでっ」
「反抗的な子にはお仕置きが必要か? おりゃ」
「ひゃんっ」

 一層強く腰を打ち付けてやると咲ちゃんは悲鳴を上げて跳ね震えた。
 制服の裾に手をかけて、胸の上まで捲り上げる。
 白のブラが曝け出された。
 ブラの布越しに乳首を舐める、じゅるじゅる舐める、舐めまわす。
 すぐにブラは俺のよだれでべとべとになった。
 視覚的にもそこはかとなくえろっちい。

「あーあー。で、なんだっけ、ほれ」
「ひぁっ、んんっ」
「あー、そうだ、主観世界と客観世界ね」
「はっ、話するならっ、腰っ動かないでっ」
「いや。でさ、さっきの新しい世界ってやつ? 咲ちゃんの場合は主観的には、つーか咲ちゃん的にはその新しい世界ってのを知らなかったわけだよな。だって処女だったから。処女じゃなくなった後の自分の世界なんて知らなかった。でも、処女じゃなくなった人間の価値観、絶対普遍的なものじゃないかもしれないけど、一般的に言われる非処女の世界観、価値観ってのは咲ちゃんが知ってようが知らなかろうが、咲ちゃんが処女だろうがずべただろうが関係なく存在してたんだよ。この理屈は分かるよな?」
「う―――あはぁっ、あっ、はい」
「咲ちゃんの認識に関係なく確かにあった、咲ちゃんが直に触れていなかろうが、それがそれとして存在していたことを説明されれば納得の出来るということ、これが客観世界ってやつ」

 ブラを上にずらした。
 小ぶりな胸とピンクの乳首が露になる。
 咲ちゃんは左右の乳首で微妙に大きさが違っていた。
 左の乳首の方が乳輪が少し大きい。
 乳頭を前歯で咥えながら動かす腰、ちん毛の辺りまで咲ちゃん汁でぐずぐずになってしまっていた。
 細い腰に指をはわすと定められたギミックみたいに背を逸らす。
 その仕草がえろい。

「主観世界って概念は割りといい加減でさ、でも客観世界は堅いんだよな。主観世界が客観世界の影響で揺らぐことはあっても、その逆は無い。コナンが「真実はいつも一つ」って言うじゃんか、あれも嘘な。たった一つなのは事実。真実は星の数ほど、人の中に、人の数だけある。同じくコナンが言ってた「真実は常に自分の中にある」ってことだけど、こっちは本当。当たり前だし、真実なんて自分の中にしか無いんだよ、揺らがない事実、客観世界から自分に都合よい真実、主観世界を取り出す、つまりはそういうこと。ちなみにコナンってのは少年サンデーの名探偵な、知ってる?」

 よっと、と掛け声をかけて咲ちゃんの体をひっくり返す。
 カーセックスで体位入れ替えるのって難しいんだよなぁ、狭いから。
 ごんって咲ちゃんが頭を窓ガラスにぶつけた、ごめんなさい。
 全くさ、咲ちゃんがこんなに抵抗するから前の席なんて狭くてメンドクサイところでしてるんだけど、本当なら後部座席倒して広い所でしたかったんだぜ?
 そのためのキューブなんだし。

 バックの体位になった俺たち。
 制服のスカートを捲り上げると白くて薄い尻が丸見えになる。
 ひくつくケツの穴も。
 それをまた指で弄り回してやろうかと思ったけど、やめた。

 しかし咲ちゃんは名器だ。
 ちんこを引き抜くとき膣の中の肉が絡みついて引っ付いてくる。
 そんでもって外に少し出るのだ。
 何もそこまで吸いつかんでも、と思ってしまうくらいにやらしい肉をしている。
 ちなみにそうして少し外に顔を出した内壁を、ちょいちょいと指先でひっかいてやるのが咲ちゃん的にお気に入りらしい。
 本人が自覚しているか、本人の主観世界でどう思っているかは知らないが、客観世界としてはそうなっている、これは確定事項だ。
 だって締まるもん、明らかに。

「で、要するに何が言いたいかってーとだ。おほっ、咲ちゃん、自分から動いてよ。ちょっとここいいとこだからね」
「ゃっ、むりぃっ」
「むー、仕方あるまい。じゃ、自分で動く」
「あぁっ」
「で、何が言いたいか。咲ちゃんはセックスをして処女を捨てて、咲ちゃん的には新しい世界に触れた。それで何が変わったかって? 知らねーよ、そんなもん。だって俺らはもうとっくの昔にセックスというものが何ら異常でないという世界観の主観世界に身を置いてしまっているから。初めっから聞く相手を間違えてるんだよ。友達がみんな処女捨てて焦ったって言ってたよな。友達もみんな非処女なわけだから、お前が非処女であることなんて普通のことなんだよ。お前の親だってそうさ。そんで俺もな。変わったか変わってないか、それがそんなに気になるなら処女のやつに聞けよ。でもお前最初に言ってたし、セックスしたからって何も変わったような気がしなかったってさ。つまりはそういうこと。セックスをして主観でその前後の相違が感じられないなら、客観世界の人たちがその相違に気づくなんて出来るはず無い。世界ってのはお前が思ってるよりよっぽどお前に対して無関心なのさ。そして気づくことも出来ないような些細な相違、些細な変化だっていうなら」

 そんなの、何にも変わってないってのと同じことじゃん。
 と言って俺は果てた。
 咲ちゃんのまんこにザーメンぶちまけた。

 咲ちゃんは伸びをする猫みたいに背を逸らせてぴくぴくしている。
 どうやら俺と一緒にイったようだ。
 うーん、案外体の相性いいのかもしんない。
 捲れあがった制服の上着、裸の背中にキスをする、汗の味がした。

 そして咲ちゃんからちんこを引き抜くと、こぽ、とあふれ出す我が子種。
 うーわぁ、結構出たな。
 昨日もしたばっかなのに、これが若さか。

 いまやぐったりと倒れたシートにもたれる咲ちゃんのまんこをポケットティッシュで拭ってやる。
 中出ししちゃったことだし、と思ってまんこの中も掃除してやった。
 ティッシュが濡れてぼろぼろになり、咲ちゃんのまんこの中に残ってしまったかもしれないが黙っておこう。


 /


「あー、すっかり遅くなっちゃったな」
「あ、麻生さんのせいでしょう!?」
「まぁ、そうなんだけど」

 時計は夜の10時を回っていた。
 結局あの後、尻を突き上げるようにしてぐったりしている咲ちゃんを見ていたらむらむらしてしまい、あんな感じでそんな感じということの顛末である。
 俺の運転するキューブは国道を通ってもうすぐ咲ちゃんの家の近くにつく。
 ジョナサンの角を曲がって坂道を下れば、交番のある今の俺にはデンジャーな交差点があり、そこを左折して俺がすっぽかした待ち合わせの時に指定してきたローソンで彼女を下ろすつもりだ。
 流れる夜景を見ながら咲ちゃんが不意に言った。

「番号……」
「は?」
「携帯の番号、聞いてもいいですか?」
「悪戯電話しないんなら……ていうか、何で?」
「何で、って?」
「いや、普通咲ちゃんくらいの年の子、っていうか、年齢に限らずあんな殆ど無理やりだったんだから、もう俺に関わるのも嫌なんじゃないかって思ったんだけど」

 言うと、咲ちゃんはくすっと笑った。

「でも、麻生さんはちゃんと答えてくれたじゃないですか」
「答えたって、質問に?」
「はい。わたしが変わったかどうか、っていうのに」
「咲ちゃんさ、あんな状況でちゃんと俺の言ったこと聞こえてたわけ?
「3分の1くらいは」
「……ふーん」

 まぁ、それで本人が納得してるならそれでもいいけど。
 信号待ちをしながら懐から携帯を取り出した。
 自番号を表示させて咲ちゃんにほいっと渡す。

「ありがとうございます」
「ん」
「麻生さんて、優しいですよね」
「嘘だぁ」
「えろいですけど」
「あー……」

 右折車線は混みこみで中々前に進まない。

「あの」
「なに?」
「どこに住んでるんですか?」
「咲ちゃんちの近所」
「それは分かりますよう、あのローソンで何度か見かけたから待ち合わせあそこにしたんですもん」

 来てくれなかったですけど、と咲ちゃんは思い出しアングリーだ。
 アクセルを踏む。
 ブレーキを踏む。
 信号は赤になった。
 次青になったらようやく右折できそうな気配。

「今度、麻生さんの家行っていいですか?」
「いいけど、来たら犯すよ?」
「いいですよ、今更ですもん」
「大きく出たな」
「はい」
「調教するぞ」
「どうぞ」

 青になった。
 対向車線の車は相変わらず多い。
 それでも隙間を見つけて滑り込ませた。
 右折、坂を下る。
 緩やかに弧を描く坂道を下って交差点に出た。
 交番の明かりが恐ろしい。
 幸いにも交差点の信号は進行方向に青で、俺はそこで左折。
 そのまままっすぐ走らせればお互いの近所のローソンだ。

「結局」
「あん?」
「わたしが変わったって思えなかったってことは、結局のところ何も変わりはしない、セックスなんてその程度のものってことなんですね」
「またその話?」
「その話がしたくて麻生さんに会いたかったんだもん」
「はいはい。……でもまぁ、その程度だよな。セックスしたからって、急に考えが大人びるわけでもなし、ガキはガキのまま、ゆっくり大人になったらいいなじゃない?」
「麻生さんはもう大人なんですか?」
「ずっとガキでいたいなぁ」
「そですか」
「あ、そうだ咲ちゃん」
「はい?」
「後部座席に俺のかばんあるでしょ、取って」
「はい」

 咲ちゃんがシートを倒して後部座席から俺のかばんを取ってくれた。
 ポーターのかばん、2万くらいしたんだぞ、そんな乱暴に扱うな。

「そん中に財布」
「ありました」
「そん中に名刺が入ってるんだけど」
「ありました……『ビフォー住宅 麻生ヒロナガ』?」
「前にバイトで作った名刺なんだけどね。住所も載ってるし、それ上げる」
「ありがとうございます」
「いえいえ」

 そんなことを話してる内にローソンについた。
 でもローソンの駐車場にはとめない。
 だってこの時間だとまだ品川さんがシフトに入ってるからね。
 近くの路上に車を駐車して咲ちゃんを下ろす。

「それじゃ麻生さん、今日はありがとうございましたっ」
「んー、まぁ、こちらこそ?」
「あはは、それじゃあ日曜日にまたお邪魔しますね」
「本気?」
「はいっ、色々教えてください」
「えろいこと?」
「はいっ」
「すっかり淫乱になったなぁ、咲ちゃん」
「麻生さんのおかげですよぅ」

 えへへと笑う咲ちゃん。
 俺の脳裏には「中学生調教実録」という友人の家にあった裏モノのタイトルがフラッシュバック。
 咲ちゃんはドアを開けて降りると、「では」と言ってぺこりんと頭を下げる。
 おう、と俺が80年代風アイドルのように指二本で敬礼のような挨拶をやってやると、彼女は笑った。

「惚れるなよ、ベイベー」
「あはは、もう手遅れかも」
「なぬ!?」

 俺がわざとらしい叫びをあげると、咲ちゃんは笑った。
 笑ったっていうか、微笑んだ。
 それは柔らかいような、曖昧なような、何と言うか、不思議な笑み。
 はっと我に返る。
 咲ちゃんが口を開いていた。

「クス……それじゃ、バイバイ麻生さんっ」
「……って、おいっ!」

 夜の闇に踊るように身を翻し、帰っていく咲ちゃんを俺は黙って見送った。
 それを見送ってなんとなくブルーな気分になる俺。
 犯罪だって、分かってたんだけどなぁ。
 とほほーと肩を落とした。

 それにしても、と思う。
 帰り際に咲ちゃんが残したあの言葉と、あの笑顔。
 なんだか胸がもやもやと温かいのはなんでだろうね。

 それの正体が、俺は本当のところで分かってしまっていたから、それから目を逸らすようにアクセルを踏み込んだ。
 俺はロリコンじゃない。
 と思いたい。


 /


 俺の平凡な日常は終わった。
 あの日、咲ちゃんと会って以来、俺は平静さを欠いている。
 ぶっちゃけ胸がどきわく。
 これって恋?
 これって恋なの!?
 って友達にすがり付いたら痛い人を見る目で見られた。
 痛くしてやった。

 そして長い長い一週間が過ぎ、俺はもういても立ってもいられない気持ちで咲ちゃんを待っている。
 場所は俺のマンション。
 昨日の夜、咲ちゃんから電話があった。

「明日の午後、伺いますね」

 その声に思い出してしまう、あの日の別れ際の微笑み。
 あああ、なんだ、やべぇ。
 このままじゃ玄関先で押し倒してそのまま犯してしまいそうなくらいに昂ぶってる。
 いかん、いかんとキミィ。
 テレビとDVDの電源を入れる。
 こないだ友人から借りてきた「中学生調教実録」をインサート、一発抜いておこう。

 ティッシュをすぐ傍に用意してスタンバイOK。
 ズボンのベルトに手を掛けたところで俺の動きは止められた。
 マンションのチャイムが鳴ったのだ。

「咲ちゃん!」

 猛ダッシュで玄関に向かいドアノブに手を掛ける。
 開けようとして、チェーンロックが掛かっていることに気づいた。
 ああんもう俺の馬鹿馬鹿まんこ!
 がちゃがちゃチェーンロックを何とかかんとか外して今度こそドアを開ける。

「咲ちゃん!」

 叫んでドアを開けた。

「あー、麻生ヒロナガさん、ですか?」
「へ?」

 しかしそこにいたのはポリスマンだったのですが。

「え?」
「ここ、麻生ヒロナガさん、22歳の学生さんのお部屋ですよね。あなたが麻生さんご本人ですか?」
「え、ええ」
「そうですか。非常に申し上げにくいことなんですが、青少年保護条例違反、児童買春とか、まぁそれ関係でね、あなたに事情聴取せよってことでお達しがありましてね」
「はぁ!?」

 俺の目の前にいるのは二人組みの警官。
 一見して若そうな方が、なんか生ごみでも見るような目で俺を見ながらそんなことを言う。
 青少年保護条例?
 なにそれ、食べれんの?

「被害者、園山咲さん。うん、被害者本人からのタレこみってのも、まぁ珍しいことなんだけど。とりあえず、とにかく署の方までご同行願えるかな?」
「は、はぁ……」

 生返事をしながら俺の頭の中は真っ白だった。
 意味が分からない、この状況の意味が分からない。
 なんでこんなことになってんの?
 俺は今日ここ咲ちゃんが来るから待ってて、待ってようとしてて。
 そんで来たのが警察で、児童買春とかなんとか言ってて、はぁ?
 被害者、咲ちゃん本人からのタレこみ?
 それって何、どういうことよ。
 咲ちゃんが警察に「わたしこの人に買われました」みたいなこと言ったからこいつらがここにいるってことだよな。
 なんだそりゃ。
 それってつまり、それってつまり。

「あの、ちょっと聞いていいですか?」
「なんだ?」
「被害者本人からのタレこみって、するってぇとつまり、俺、咲ちゃんに売られたってことすか?」

 俺がそう言うと、警官は顔をしかめた。

「売った売られたってのは私たちの知るところじゃないですがね、ともかくあなたは中学生の女の子を買ったっていう疑いを持たれてるんですよ。……でも、この様子だと疑いってんじゃなくて実話だったみたいだけど」
「ああ、ああ、そ、そうすか……」

 俺はもう言葉もない。
 咲ちゃんは俺を売った。
 警察に売った。
 そんなことをして咲ちゃんにどんなメリットがあったんだろう。
 わかんねぇ。
 あんなこと言ってたけど、気にしてない風なこと言ってたけど、俺、やっぱり恨まれてたのかな。
 だから、警察に通報されて、そんで今こんなことになってんのなかな。
 なんでか知んないけどちんこ勃ってきた。
 ああもう、何にもわかんねぇや。
 咲ちゃんに会いたい。

「おまわりさん」
「なんだ?」

 空ろな目言う俺に警官も問い返してくる。
 ちんこが熱い。
 咲ちゃんに会いたい。
 だから俺は言った、とりあえず、暫くは出来なくなると思ったから。

「すいません、俺今オナニーの真っ最中だったんだけど、とりあえず一発抜いてきていいですか?」

 部屋の中では「中学生調教実録」が垂れ流しになっている。
 きっとあれも証拠として押収されるのだろう。
 持ち主の友人に心の中で深く詫びた。
 畜生、咲ちゃんの馬鹿。

 あんな何でも無い顔してこんなきっつい仕打ち、ガキのやることじゃねーや。
 セックスして大人になりましたから、とそんな幻聴を聞いた気がした。
 なるほど、咲ちゃんの馬鹿。

 そんなことを思いながら後ろ手に玄関の扉を閉めて、警官たちがまだ何か言っているのを聞き流して。
 俺はまたちんこを握った。
 しごく、しごきまくる。
 ああ、すんげー悲しいよ、気持ちいい。
 画面の中では目隠しされたカワイイ中学生がおっさんのケツの穴を舐めさせられている。
 俺はその子の顔に咲ちゃんの顔を重ねて。

「うっ、イくっ」

 どぴゅっ。

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